従来の急行用車の1000形が、設備的に古くなっていたため、1976年から作られた車両。
輸送の「量」から「質」への転換という目標を持って製造された。
1000形は2扉の集団見合い式クロスシートであり、ラッシュ時や短距離の客には乗降性の悪さなどから評判が芳しくなかった。
そこで、平均乗車距離の短い鎌倉線で運用される3050形は4扉ロングシートという構成になった。
ただし、三浦半島への観光利用もある程度存在することから、4連の車端部にはボックスシートを設置している。
4連のみとなったのは、渋谷駅の構造上4連側が混雑しにくいことと、6連は逗子で切り離されるためである。
また、3000形はクロスシートを残しつついかに立席客の快適性を確保するかという点に重点が置かれた結果、3扉の自動転換クロスシート(各扉に一番近い座席と車端部のボックスシートは転換せず)となった。
自動転換にする理由は、向き合って座ることを考慮しないことにより、各扉寄り以外のシートピッチを860mmまで縮め、立席スペースを広げるためである。
なので、手動での転換は不可能となっている。
また、吊革も他社の3扉クロス車より多めに設置されており、輸送量の多い相急らしい配慮と言えよう。
以上のように書くと、「質より量」とは思われるかもしれないが、座席数を出来るだけ減らさず、立席客が楽になるようにしているという点では立派な「質」の改善と捉えることもできる。
もっとも、「量より質」という思想が顕著に現れているのは足回りである。
界磁チョッパ制御・回生ブレーキ・電気指令式ブレーキという新機軸を採用し、150kWの大出力モーターを搭載。
MT比は10連時に8M2Tで、「量より質」とは言えオーバースペックの感が強い。
本線用3000形は6M+2M2T、鎌倉線用3050形は4M2T+4Mという差異は、それぞれの終点まで運用される側の編成をオールMとしているため。
すなわち、基本的な運用として、本線系統では6M車が小田原行き・2M2T車は大野で分割されて平塚行きとなり、鎌倉線では4Mが三崎港行き・4M2Tは逗子止まりとなる。
2M2Tでの運用時は、通常勾配対策で抑えている分の出力まで使用するため、限流値増スイッチを常用することになっている。
3000形と3050形では加速度が同じにも関わらず、3050形の方がギア比が低いのは、中井地区の連続勾配区間を頻繁に走ることから余裕を持たせてある3000形に比べ限流値を高くし、その分を高速性能の改善にあてるのが目的である。
3000形は、看板列車としては古くなってきたため、2003年以降、本来は増発分の補填であった8000形に置き換えられて廃車が始まっている。
足回りはまだ十分使用に耐えるので、全ての廃車車両の主電動機などが9050形に流用されている。
←渋谷
6R+4R(3000):3000(Mc1)-3300(M2)-3200(M1)-3300(M2)-3200(M1)-3100(Mc2)+3400(Tc1)-3200(M1)-3300(M2)-3500(Tc2)
6R+4R(3050):3450(Tc1)-3250(M1)-3350(M2)-3250(M1)-3350(M2)-3550(Tc2)+3050(Mc1)-3350(M2)-3250(M1)-3150(Mc2)
編成重量 | 238t(6M)/138t(2M2T)/216t(4M2T)/160t(4M) |
制御方式 | 界磁チョッパ制御 1C8M |
主電動機 | 直流複巻電動機(補償巻線付) 出力150kW |
ブレーキ | 回生制動付き全電気指令式ブレーキ |
定員 | 3000形:先頭車130(56)/中間車139(64) 3050形(6連):先頭車146(50)/中間車156(58) 3050形(4連):先頭車145(50)/中間車152(58) |
歯車比 | 4.5(3000形)/4.21(3050形) |
起動加速度 | 3000(200%まで):2.75km/h/s(8M2T)/3.31km/h/s(6M)/2.25km/h/s(2M2T:限流値増) 3050(250%まで):2.75km/h/s(8M2T)/3.3km/h/s(4M)/2.35km/h/s(4M2T) |
速度(km/h) | 8M2T(3000) | 8M2T(3050) | 2M2T(3000):限流値増 | 4M2T(3050) | 6M(3000) | 4M(3050) |
40 | 15 | 15 | 18 | 17 | 12 | 12 |
45 | 17 | 17 | 21 | 20 | 14 | 14 |
50 | 19 | 19 | 23 | 22 | 15 | 15 |
55 | 21 | 21 | 26 | 24 | 17 | 17 |
60 | 23 | 22 | 29 | 26 | 19 | 19 |
65 | 25 | 25 | 32 | 29 | 21 | 20 |
70 | 28 | 27 | 35 | 32 | 23 | 22 |
75 | 30 | 29 | 39 | 34 | 25 | 24 |
80 | 33 | 32 | 44 | 38 | 28 | 27 |
85 | 36 | 35 | 48 | 41 | 30 | 29 |
90 | 40 | 38 | 54 | 45 | 33 | 32 |
95 | 44 | 41 | 60 | 49 | 36 | 34 |
100 | 48 | 45 | 68 | 53 | 40 | 37 |
105 | 53 | 49 | 77 | 58 | 44 | 41 |
110 | 59 | 53 | 87 | 63 | 49 | 44 |
Q:「オーバースペックの感が強い」どころじゃないんですが。150kW8M2Tって何ですか。
A:通勤車にも制御器類を流用することを考えたら、1C8Mで統一したい。そうすると、3000の6連は中井あたりの連続35パーミルを走らなきゃいけないから4M2Tじゃ不安。3050の4連が2M2Tだと1ユニット止まったら動けない。ついでに葉山線(注)は駅間短いから起動加速を確保しなくちゃいけない。そうなると4M。そうなると10連を組んだら8M2Tになるのが論理的帰結かな。
Q:素直に1M車をつければいいだけでは?
A:そういう発想が設計者に無かったんじゃない?だいたい性能なんて良すぎて困るものじゃないし。
Q:えーと、過剰性能は変電所が足りなくなったりしませんか?
A:どうせ増発すれば足りなくなるから、今増やしておきましょう。なんて説得があったとか。
Q:増発した後でまた足りなくなりそうな気がしますが。それに葉山線は大して増える見込みもなかったでしょう。
A:その頃三崎口に延伸した京急への対策という言い訳が罷り通ったという噂。
Q:分かったような分からないような。オールMもどうかと思いますが。
A:京急新1000形並の加速度だけど、何か問題ある?
Q:もう勝手にしてください。ところで、時々速度計が有り得ない位置を指している気がするんですが。
A:立ったスジの副産物です。安全には問題ないわ。法律は知りません。
Q:130km/h出していましたが、それでも余裕があるあたりが3000系列の恐ろしさですか。
A:だから9050形なんてもんを作り始めるのよ。
Q:ところで、吊革ですが。この頃から暴走し始めたんでしょうか。
A:3000だと、扉の部分に3列目の吊革を付けるという自由な発想が光りますね。
Q:優等車なんですから多少は美観を考えてください。ゴテゴテしすぎです。
A:実用性を忘れた通勤電車なんてただの鉄屑。
Q:まあ混んでるときは有り難いですけどね。満員でも掴むところありますし。
A:手すり60人分に吊革108本。かつてこれほどまでに吊革の多いクロスシート車があったか。
Q:そりゃこんな変なの作るのは相急ぐらいでしょうよ。あとさっきの説明でどういう配置か分かれというのはキツいと思います。
A:えーと、要するに枕木方向の吊革はクロス車だと通常、あってもドアと座席の境目ですが3000形ではドアの中心あたりと平行な位置に枕木方向の吊革を設置しています。これでいいの?
Q:下手な説明をありがとうございます。図で書くとこんな感じですかね。
A:あんたの図の方がよっぽど下手。
Q:この図の赤と青の線になってる部分に吊革が付くわけです。座席部分の吊革は扉から2列目の座席あたりまでで切れます。
A:ボックスシートになる部分だと座席脇の取っ手を掴めないからね。
Q:あと、その取っ手が2人分になってるのもいいですね。
A:大量のお客さんが立つわけだから、掴むところは十二分に確保しないと。
Q:3050の吊革はまだ無難な感じですか。
A:枕木方向の吊革が扉の両脇と、扉間のロングシート部に2つ。
Q:でもやっぱり本数多いですよね。
A:線路方向が60本×2で120本。枕木方向が4本×14で56本。合わせて176本。これでもJRの6扉車並の本数ね。
Q:なんでそんなに吊革だらけなんでしょうね。相急。
A:混むから。あと広告収入。
Q:もの凄く分かり易い理由ですね。
(注)葉山線=鎌倉線の逗子以南のこと。
逗子で分断される列車が多いためそう呼ばれる。